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2009年3月 7日 (土)

「ゲームを壊す」とは?ゲームの理論とプレイヤー行動(4/4)

「お仕事」という概念
ともに、「自分の利益を最優先しての行動が、かえって自分を不利な状況に追い込んだ」という共通点があります。

意思決定についての研究「ゲームの理論」のテーマの一つとして「囚人(しゅうじん)のディレンマ[Prisoners’ Dilemma]」があります。
あなたが2人組の犯罪を行って捕まった囚人だったとして、下のような司法取引を持ちかけられた場合どうするでしょうか?

2人とも黙秘したら、2人とも罰金200万円。
一人が黙秘して、一人が自白したら、自白した方は無罪になり、かつ告発報奨金100万円。黙秘した方は罰金1500万円。
2人とも自白したら、2人とも罰金1000万円。
なお、2人は双方に同じ条件が提示されている事を知っており、かつ、別室に隔離されていて相談が出来ない状態である。

無罰と告発報奨金を狙って自白することを選ぶでしょう。 しかし共犯者も同じことを考えて自白するでしょうから、共に1000万円の罰金を払い、2人の罰金合計は最多となってしまいます。「個人の利益」追求の結果、全体の損が大きくなっている、つまり「全体の利益」と反してしまう状態を「囚人のディレンマ」と呼ぶわけです。
テーブルゲームに置き換えると、「2位以下のプレイヤーが全員、目先の利益だけを追って行動すると、それが1位のプレイヤーへの後押しとなってしまい、却って独走を許す結果になる」現象になります。

これを防ぐため、あえて自分の利益を取らないことで、全体の損失を抑えようと行動することがあります。この一時的な自己犠牲行為をテーブルゲームでは「お仕事(おしごと)」と呼びます。1990年代、モダンゲームプレイヤー間に支持者が多かった「雀鬼流」日本麻雀で、「マッチ後半、トップ者以外は可能な限り全体が差のない状態を作る」という思想、およびそのための行為の総称がモダンゲームシーンに定着しました。
「お仕事」の概念も考えることによって、いつ利益を確保するか、いつ犠牲を払うかの選択も必要となり、思考が立体的になります。
ドラフトで「自分の利益は少ないが、人に渡したくない選択肢をとる」行為のことを「敵対ドラフト(カットドラフト[Cut Draft]/ヘイトドラフト[Hate Draft])」 と呼びますが、これも「お仕事」の一種です。

人は「全体最高・局所最低」には耐えられない
繰り返しになりますが、「お仕事」というのは一時的な自己犠牲です。ですから、「お仕事」の強要や、一人で何度も「お仕事」をするのは、「何で自分だけこんなひどい目にあうんだろう……」と思わせてしまうため、精神衛生上好ましいことではありません。
最近、日本麻雀のルールで「沈みウマ」「Aトップ」などの「配給減点以上者の数で、順位点にバイアスがかかる」ルール(「雀鬼流」も該当)の支持者が減っているのは、「自分の上がりで手に入った得点のため、自分の順位点がそれ以上に下がってしまう。あがりが目的のゲームで、自分だけはあがらない(それどころか人にあがらせる)ことが正解になる」現象を嫌ってのことです。

「囚人のディレンマ」は自己犠牲や報復(繰り返し試行の囚人のディレンマにて起こる)の概念を含むことから、数学や経済学の領域を超え、心理学・哲学・倫理学の領域にまで入りつつあります。
皆様にもテーブルゲームをプレイしながら、意思決定の社会性について考えて頂きたいと思います。

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連載:テーブルゲーム用語の基礎知識」カテゴリの記事

コメント

 恥を晒すようで少々忸怩たるものがあるのですが、私は他の人よりもボード屋暦が浅いのと、あと結構(?)そそっかしいのが災いしまして、いわゆる「ゲームを壊す」という行為に関してはやられる側よりもむしろやらかす側に立つことが多いんです。そういう中で個人的に気をつけているのは「一つ一つの着手に意味を持たせる」事ですね。結果的にゲームを壊す一手になっても、そういう手というのは周りを納得させるだけの根拠を持っていますからね。まあ、逆に言うと意識しているという事はそれが出来ていない証拠なんですが(笑)。
 後は根本的な体調管理ですか。本当は体調が悪い時に他人を巻き込んでゲームなんぞをやったらイカンのですが、本当にひどい着手を打つときというのは何らかの理由で集中力が切れている場合が多いので。そういうときに打った、いわゆる「何の気なしの一手」というのは後々盤面全体をぶち壊すことが多いです。
 要はよく考えて打つということですが、これもやりすぎると長考になって、他のプレイヤーさんのリズムを崩してしまうのも事実。結論を言えば、この手のゲームに盤面を通じた対話という一面がある以上は、「同卓の人間を不快にさせる行為は、やってしまった時点でその人の負け」なんですね。当然、これは他の人がやってしまった盤面破壊行為に対して過度に反応する行為も含まれています。だから、やらかしてしまった側としてはやった事はしょうがないとして、それを短期間のうちに再度やらないこと。やられた側としては感情的にならず、できればどこがまずかったのかを(解りやすく)教えるくらいの余裕を持つことが大事ですね。娯楽でストレス溜めてたんではそもそも本末転倒ですから。
 

投稿: farlanx | 2009年3月13日 (金) 21時59分

ご無沙汰しております。(わかるかな?)
貴サイトによって、遠方から札幌のテーブルゲーム事情を知る事が出来て、大変有り難く思います。
今後のご活躍も陰ながら楽しみにしています。

さて、記事への感想を書かせていただきます。

自分が3着の時に、1着になれないことは確定しているが、せめて2着になるために2着との逆転を狙う事があります。
これが正当な行為かどうかは、正直わかりません。
少なくとも2着と3着のプレイヤーの扱いが明らかに異なるルールの場合は正当でしょう。
しかし、2着と3着のプレイヤーの扱いが変わらない場合は、その事実を理由として、2着との逆転を「狙ってはならない」ものなのでしょうか?

また、逆転の有無に関わらず、下位から上位への「妨害」は起こりうると思います。
たとえば、現在2着の人に苦しめられた3着の人には、2着の人が1着になるのを妨害する動機は十分にあります。
2着の人が妨害されうる事もルールで決まっている事なので、「逆転出来たのに3着の人に妨害されたので出来なかった」というケースでは、妨害された人の守りが甘かったと言えます。
もしも妨害される事が著しくゲーム全体としての楽しみを損なうのだとすれば、それはゲームのルール自体に甘い部分があると言わざるを得ないです。
(簡単に妨害はできるが絶対に逆転はできないというルールだと、バランスが悪い)

1着に逃げ切らせるか2着に逆転させるかの選択権を3着の人が持っているゲームというのは、ある意味面白くはないですか?
そのゲームでその人が3着になった理由が1着からの攻撃だったなら、一矢報いるために2着に敵討ちを託すかも知れませんし、2着の人に妨害されて3着になったなら、2着の人にだけは勝って欲しくないでしょう。
むしろ、後半戦に参戦出来ない下位プレイヤーに、活躍の場が与えられないままに敗戦処理(=お仕事)をさせるようなゲームのルールには甚だ疑問を感じています。
「もう一人負けでいいから投了させてくれ」と言いたくなることもあります。
3着の人も4着の人も、上位の運命を変える重要なファクターとしてゲームに参加を続けているのですから、そのプレイに対し、上位から下位に向かってゲームを「壊した」と責める事自体が、自分がゲームに負けた腹いせにしか見えず、やや非紳士的な程度に見えます。

最後に、farlanx氏の指摘する「何の気なしの一手」についてですが、ルールの無知が原因となる事も多々あると思います。
ゲームのルール理解には時間を要し、何回も遊ばないと理解出来ない事も多いので、その辺は参加制限をかけていない以上やむを得ないと思います。

逆に、上位が下位を妨害する事のマナーについては、生憎経験がそう無いので言及できません。ご容赦。

以上、1意見まで。

追伸
5月下旬前後に帰省しようと思ってるんですが、最近は日曜日の開催はあんまり無い感じなんでしょうか?

投稿: 九剣(ここのつるぎ) | 2009年3月27日 (金) 14時47分

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